大光炉材60年史
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81 1.原材料価格の高騰 世界の粗鋼生産量は1990年代までは7億トン前後を推移していたが、2000年代にはいると中国を中心としたアジアの好況で需要が急増し、平成16年(2004)には初めて10億トンを超えた。「ゴーン・ショック」で苦境にあった日本の鉄鋼業界も、輸出が伸びて徐々に活況を呈してきた。大光炉材の売上高は、平成15年度(2003)を底に、営業をはじめ全社員の懸命な努力で、平成18年度(2006)決算では急激な落ち込み前の水準まで回復し、その後も堅調に推移してきた。しかし、世界的な鉄鋼需要の拡大のため、原材料価格が急激に上昇したことが大きな課題となってきた。平成20年(2008)1月31日発行の社内報「TAIKO」で、取締役購買部長の長副渥美は、次のように記している。 「世界を観れば、昨年(2007)1年間で粗鋼生産が1億トンも増え、13億トン台に達したとの情報があります。この様な背景により耐火物用原料の消費も増えており、市況としては売り手市場であり、供給側は非常に強気な販売姿勢を示しています。 その中でも耐火物原料の主な購入ソースである中国は自国内の消費の拡大、資源保護及び環境保護政策の観点より輸出税を賦課する原料の種類を増やし、輸出数量の抑制を図っています。その結果、急激な価格上昇の傾向にあります。又、原油の値上げは原料焼成費、物流費の上昇、及び有機薬品の価格上昇要因となっています」 こうした原材料価格の高騰に対して、購買部では安定調達と価格上昇の抑制を目標として中国一辺倒ではなくロシア、ヨーロッパ、南米、南アフリカなど世界に視野を広げた調査を行い、新規購買先の拡大活動に取り組んでいた。営業部門は顧客に対して丁寧できめ細かな説明を行い、適正な価格転嫁への理解を求めた。さらに、全社をあげて経費節減に取り組むことで利益の創出を目指した。2.安全活動と環境保全の取り組み また、21世紀に入ってから環境問題を中心にCSR(企業の社会的責任)への関心が高まってきた。環境問題では平成17年(2005)2月に地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減を目指す京都議定書が発効され、企業は事業活動における二酸化炭素削減への具体的な目標設定を求められた。 さらに、平成17年(2005)には耐震偽装マンションが大きな事件となり、平成19年(2007)には消費期限切れ原料を使用した食品や食品メーカーによる賞味期限改ざん問題が次々と表面化し、企業のコンプライアンス(法令遵守)への姿勢が厳しく問われた。さらなる飛躍に向かって(2007~2013)第12章通史 第2部 第12章・さらなる飛躍に向かって(2007~2013)

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