大光炉材60年史
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69通史 第2部 第10章・低コスト化の試練と挑戦(1995~2000)3.不定形耐火物の用途が広がる 製品単価の下落は大きな試練であったが、不定形耐火物の生産量は平成4年(1992)に耐火レンガを上回って以来、耐火レンガが減少する一方であるのに対し、大きな減少はなかった。それは、不定形耐火物による設備の築造が省メンテナンス、省力化、コストダウンなどのメリットがあり、合理化の進展で樋だけでなく溶鉱炉、各種溶湯容器、雰囲気炉など多彩な分野での活用が広がってきたことによる。 たとえば、取鍋の内壁施工では、従来の耐火レンガではレンガを取り去り、新しいレンガを貼り合わせるため、解体・施工には約2日を要し、しかも1日当たり7、8人の熟練工が必要であった。不定形耐火物であれば、摩耗したレンガの表面を一律に磨いた後に枠を作り、その間に不定形耐火物を流し込んで固め、その後に枠を除去するだけで済む。レンガの表面を磨く工程はレンガの除去よりも若干時間がかかるが、施工工程は4時間程度でできるため、1日で作業が完了し、必要人員も2、3人で済む。取鍋の内壁は摩耗が激しく、1週間に1回は改修が必要な場合もあるほど、頻繁に行われる。耐火レンガから不定形耐火物による施工に変えることで、内壁施工に要する時間が半減されるほか、作業に要する人員も従来に比べ3分の1程度軽減されるため、鉄鋼メーカーにとっては大幅なコストダウンにつながる。 こうしたことから、鉄鋼メーカーは合理化を進めるなかで不定形耐火物による設備の築造、メンテナンスのメリットを積極的に活用する機運が高まってきた。大光炉材では、そうしたニーズに応えるために、技術開発に力を注いだ。耐火物生産量(単位:千t)和暦西暦耐火レンガ不定形耐火物計平成6年1994年7078441,5517年1995年6928451,5378年1996年6648331,4979年1997年6618881,54910年1998年5418041,34511年1999年5137701,28312年2000年5457821,3274.新技術の開発と導入 日本の鉄鋼メーカーはかつて日本が技術協力をしていた中国の宝山(上海)製鉄所や韓国の浦項製鉄所などアジアの製鉄所をはじめ、世界の製鉄所との競争が激しくなってきた。それに伴って、鉄鋼業界の最大の消耗品である耐火物も国際競争の波にさらされ、安価な輸入品の採用が増えてきた。当初は長期間の輸送でも変化のない耐火レンガが中心であったが、90年代半ばの急激な円高を契機に海外、特に中国からマグネシア・カーボン煉瓦をはじめ不定形耐火物も安価品が輸入され、これに伴い国内品の低価格化が拡大した。

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