大光炉材60年史
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58 2.ファインセラミックスプロジェクトが発足 昭和56年(1981)3月、ファインセラミックス開発プロジェクト(略称FCP:Fine Ceramics Project)が発足した。プロジェクトチームのリーダーには谷口泰造が就任し、石崎哲雄が市場調査と技術調査、研究所の藤崎勵、南里隼人、金子泰成が中心となって研究開発を進めることになった。FCPの基本構想と初年度の計画は以下のとおりであった。1. FCP基本構想 「当社の技術・経験・設備・人材を基礎として、高付加価値のファインセラミックス製品の製造技術を確立し、もって新規市場を獲得、新規事業の展開をはかる」2. 昭和56年度の計画 上記構想を実現するためのステップとして、下記の事項を遂行する。 (1)市場調査 ファインセラミックス市場の現状、将来動向等の情報を収集分析し て、開発対象とすべき製品を昭和57年3月までに確定する。 (市場調査計画の詳細は別途作成) (2)技術調査および試験 開発対象製品を確定するために市場調査を進めると共に、ファイン セラミックス製造の基礎技術を習得するために技術調査と試験を行う。 (ⅰ)泥でいしょう漿鋳込み法 別途試験計画により、試験担当メンバーが主体となって推進する。 (ⅱ)押出し成形法 社外の研究機関(京都市立工業試験場ほか)の指導を受けて 試験を進める。昭和56年7月までは押出し成形に必要な素地の 予備的研究、10月以降は成形法の基礎試験を行う。 (ⅲ)アイソスタティックプレス法 装置の調査、成形技術調査を行う。 ファインセラミックスは、1970年代の末ごろからその優れた耐熱性を活かしてエンジン部品などへの活用が一部の産業界で注目されていた。それが「夢の新素材」として一躍注目され、いわゆる「ファインセラミックスブーム」がおきるのは昭和57年(1982)のことで、通商産業省(現経済産業省)にファインセラミックス室が設置されたのもその年であった。FCPが発足したのは、その前段階ともいえる時期であった。 ファインセラミックスの技術は、不定形耐火物の技術の応用であることから、研究領域が共通している。また、定形耐火物などと比べて設備も小型で済むので、投資も少なくて済む。しかし、新しい素材なので、試作した製品を評価するような装置が少なく、九州工業試験所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 九州センター) など外部の研究機関で評価してもらうしかなかった。

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