大光炉材60年史
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56 技術ライセンス契約を結ぶ前に、USスチールのゲーリー製鉄所(インディアナ州)で50トンの規模の樋材でトライアルを行った。アライドミネラル社の社員たちが多数集まり、大光炉材の技術陣による指導のもとに行われる樋の施工を熱心に見学した。このトライアルは製鉄所にも高く評価され、成功裡に終わった。ライセンス契約の締結後、アライドミネラル社は精力的に営業を展開し、急速に売上を伸ばしていった。 大光炉材とアライドミネラル社との関係はその後も良好に続き、平成2年(1990)には共同研究事業の契約を締結するなど、さらに発展させてきた。その間、アライドミネラル社は業績を大幅に伸ばし、アメリカの耐火材メーカーとして確たる地位を築いてきた。その原動力となったのが、大光炉材とライセンス契約を結び生産している流し込み樋材「FIREWALL BFシリーズ」やタンディッシュコーティング材であった。 研究所の岩崎逸俊は、技術指導でアライドミネラル社を訪ねた際、営業マンが「私の家はFIREWALL House だ」、つまり、「(大光炉材の)FIREWALLで会社が儲かったお陰で家が建てられた」と言っていたというエピソードを語る。アライドミネラル社の社員たちも「FIREWALL」で会社が成長したということを意識していたのだろう。4.海外ビジネスのメリット 1980年代の技術提携では、昭和62年(1987)にフィンランドのローヤ社およびフランスのAGS社に流し込み樋材ローセメントキャスタブルをライセンス供与している。こうした技術輸出は、ライセンス料が実収入として得られるだけでなく、以下のようなメリットがあった。・技術供与するために技術のガイドブックを作成するなどの過程を通して社内教育にもなり、研究所、生産部のレベルアップと新人教育の基礎となった。・大光炉材の技術力が国際的に不動のものになった。・ライセンシーとの技術交流により戦略的情報が得られ、大光炉材のトータルコストダウンに貢献した。 海外ビジネスの積極的な展開は、海外の会社との交流によって技術力の向上や社員の国際化時代への対応力の向上、世界でも先端の仕事をしているという自信と誇りを持つことによって仕事に対するモチベーションがアップするなど、目に見えない効果をもたらした。それは、ライセンスによる収益以上に大きな効果があった。

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